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仕事を投げ出し電車に乗る。もうすべてどうにでもなってほしい。なにが起ころうとすべて私の知るところではないし、別に世界の命運を握っているわけではない。

 

冬の東京はこんなに雨が降らないなんて知らなかった。私は雨がすきなので、すこしだけさみしい気持ちになる。

 

大学時代に研究の一環で恋愛小説を150冊読んだ話をするとその後はたいてい一番面白かった作品を聞かれるのだけど、私は話をまったく覚えていないので狼狽えてしまう。物語を読む時は研究に必要な部分のみを汲み取ることが大切で、物語に没入しすぎてはいけません、と教授は言っていた。きっと校閲もこんな感じなのだろうか。いつか時間ができたら研究対象だった小説を読み返してみたい。