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精神科にいく。お医者さんは眉ひとつ動かさず無表情で私の話を聞いていた。共感されたいわけではなかったし、むしろ下手に共感されるよりずっといい。カウンセリングを薦められたけれど、内面特性と同化した根深い病巣を取り除ける気が全くせず、やめる。薬を貰い帰る。だめになってしまったときのための御守りが手元にあるというのはかなり心強い。

 

だめになったのはいつからだろう。明確に自覚したのは大学1年生の頃だけど、覚えていないだけで物心ついたときからずっとだめだったのかもしれない。ついでにきっかけもわからない。やさしい親に育てられて、愉快な友人たちに囲まれて育ったはずなのに、どうしてこうなったのかわからない。精神分析がしてみたい。治療目的ではなく、ただの興味で。

 

私は自分自身の感情のコントロールが上手だと思っていた。たとえば嫌なことをされても平気な顔ができるし。でもそれはお医者さん的には「感情のコントロールが下手」ということらしい。怒るべきときに怒ることができて、悲しむべきときに悲しむことができなければいけない。怒りだけでなく、悲しみを抑えることも立派な感情のコントロールなんだ。当たり前のことだけど、言われるまで気づかなかった。