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新橋駅のエスカレーターが速いのにも理由があるのかな。

 

夜の赤坂。ライトを片手に地面に落ちた何かを探している人に友人が声をかけ、三人でハンドクリームのキャップを探す。いつも私は無関心の温かさのようなものを盾にして困っている人を素通りし、そのあと後悔に苛まれるというようなことを東京にきてずっと繰り返していたから、躊躇わず困っている人を助けることができる彼女のことを本当にすごいと思ったし、なぜか私が救われる。キャップは見つからなかった。

 

東京にきてすぐのころ、新宿駅の階段を踏み外して足首を捻挫し、歩けずうずくまっていた私のことを一切誰も気にすることなく通り過ぎていったこと、その孤独、羞恥、怒り、痛み、そのすべてを思い出す。そのとき、無関心こそが正解で、この土地で私はずっと一人で生きていかないといけないんだ、と思った。でもそのときに君のような人がいれば、私はずっとずっと救われていただろうな。どうしたって憧れてしまうよ。