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会社で偉くならなくてもいいよ、生きていくために必要な最低限のお金さえあればいいんだよ、とおだやかな声色で話す父親を思い出す。彼と話すといつも安心する。この人は絶対に私を否定しないと知っているから。

 

今日は寝ていなかったので頭がふわふわしていて、出張先でミスをするだろうと思っていたけれど、案の定大きめのミスをいくつもしてしまう。ひどく惨めでくるしい。無能さを証明するためだけの日々、その人生。

 

LRTに乗っている。私のよく知っている市電よりも静かで速くてよかった。でももし函館の市電が速かったらあの素敵な景観をゆっくり楽しむことができないから、函館の市電は今のままでいてほしいな。

中は対面座席の割合が高い。普通の人は対面座席に対してここまで大きな抵抗を抱かないんだろうな。飲食店でも本当は横並びがいい。誰にも顔をみられたくない。私は重たい鞄を床に下ろしドアのそばに立つ。

たくさんある降車口のすべてが改札になっていて、乗客はそのいずれからも降りることができる。この仕組みを考えた人間はすこし楽観的すぎるように感じる。私は性善説を信じていない。